ネコーロ グリッロ アパッシメント 2023 カンティーネ エウロパ
Necoro Grillo Appassimento
参考小売価格:1500円ぐらい
産地:シチリア州
品種: グリッロ
購入元:地元のローカルスーパー
インポーター:株式会社メモス
先日、スーパーのワゴンセールで、まさに“ノールック購入”をしてしまいました。理由は単純、「半額シール」の魔力です。値札なんて見ません。たとえ元値が一万円でも、半額なら五千円得したことになる——このロジック、庶民にとっては正義です。そんな勢いで、銘柄や品種はさておき、目についたボトルをカートにまとめて投入。レジでのお会計に、ちょっとした高揚感すら覚えました。
その中に、ひときわ輝いた一本がありました。イタリア・シチリアの白ブドウ品種「グリッロ」を陰干しで仕上げた、アパッシメントタイプの白ワイン。以前から動画やブログでも繰り返しご紹介している通り、グリッロは庶民ワインのなかでも屈指の実力派。香りと味わいの厚み、そして守備範囲の広さが魅力です。和洋問わず、晩酌のお供として非常に頼りになります。
今回、このワインを取り上げたのは、YouTubeの視聴者コメントがきっかけ。「肉にも合うくらい濃厚」との声を受け、それならばと牛すじ肉とのペアリングを試してみました。とはいえ、普段から鶏や豚は白で合わせるのが好みの私。あえて赤ワイン向きと思われがちな牛すじを、白ワイン寄りの味付けで調理してみることにしました。
使ったのは白だしとコンソメ、そして仕上げに少量の白ワイン。結果はどうだったか?
まずワイン自体の印象を。色調は黄金色に近く、香りは熟したリンゴとはちみつ、そこに白い花のニュアンスが重なります。口に含むと、しっかりとした苦味と密度のある味わい。甘口や軽やかなタイプを好む方にはややハードかもしれませんが、晩酌派や「ワインは飲みごたえがあってナンボ」という方にはぴったりです。温度が上がるにつれて苦味がやわらぎ、親しみやすさも増してきます。
前菜にはカプレーゼ。カッテージチーズに黒こしょうをガッツリふりかけたアレンジで、スパイスの刺激とチーズのまろやかさがワインの個性と調和しました。ちなみにソムリエ協会の機関誌で、田崎前会長が「カプレーゼとワインは合わない」と書かれていたのを読んだことがありますが、私としてはこの組み合わせ、大いにアリだと思っています。こういう話になると、「それはあわないって御大が」とか言ってくる揚げ足取りも現れそうですが、好みは人それぞれ。そこに正解なんて、ありません。
さて、メインの牛すじとの相性ですが、一言でいえば「悪くない」。「完璧なマリアージュ」とまではいきません。すき焼きに日本酒、しゃぶしゃぶにスパークリング——そんな感覚に近いかもしれません。塩焼き鳥に白ワインのような安心感はあるけれど、醤油ベースの煮込みに赤ワインを合わせたときのような“化学反応的な高揚感”には至らず。とはいえ、ワインの苦味が料理の旨味で丸くなり、互いを補い合う関係性は成立していたと感じました。
グリッロの底力と、牛すじの意外な懐の深さ。今回は“及第点”という結論ですが、だからこそ、また新たなペアリングの旅が続いていくのです。