ジョゼフ・ドルーアン ブルゴーニュ シャルドネ
Joseph Drouhin Bourgogne Chardonnay
参考小売価格:3831円
産地:ブルゴーニュ
品種: シャルドネ
購入元:アマゾン
インポーター:サッポロビール
アマゾンのスマイルセールで、ついに手が伸びた「ジョゼフ・ドルーアンセット」。
言わずと知れたブルゴーニュの名門で、世界中のワインファンを魅了してやまない名プロデューサーです。
このセールでは村名ワインが何本か入ったセットが特価になっていたので、思わずポチリ。
純粋なブルゴーニュ・シャルドネを飲むのは、なんと昨年の9月以来。半年以上もご無沙汰でした。
私のように日常的にワインを飲む人間ですら、なかなか手が出せないのがブルゴーニュ。
やっぱり3000円オーバーはざらで、気軽にポンとはいけません。
なので普段は「オルタナティブ・ブルゴーニュ」──新世界のシャルドネで代用しがちなんですが、やっぱり本場の名門が醸す村名ブルゴーニュは別格。
今回はその中から、まずスタンダードな1本を開けてみました。
気楽に開けられる価格帯ではなかったのですが、今日の晩ごはんが白身魚のムニエル。
これはもう、満を持して登板させるしかないでしょう。
■ テイスティングコメント
グラスを回すと、ふわっと広がるのはトロピカルフルーツや柑橘系の果実香。
正直、もっとバニラ系の樽香を期待していたんですが、それよりも果実味が前に出た印象です。
ただ、香りに単調さはまったくなく、ひとつひとつはつかめないのに高級感がある。
──こういう時に使いたくなるのが「エレガント」という言葉。
私の中では「何の香りかは分からないけど、たしかに複雑で上品」っていう時に使います。
口に含むと、まず苦みと辛さ。
「華やか」とか「フルーティ」とか、そういうワードを期待して飲むと肩透かしを食らうかも。
ですが、これぞフランスワインの真骨頂というべき、食事と合わせることで真価を発揮するスタイル。
単体で飲むには、少し経験値がないと「ん?これ美味しいのか?」となりかねませんが……
白身魚のムニエルと合わせた瞬間、完全に覚醒。
ワインが魚のコクを引き出し、魚がワインの酸をまろやかに包む。
「マリアージュ」という言葉の意味を教えてくれる一本でした。
■ ジョゼフ・ドルーアンについて
ジョゼフ・ドルーアン(Joseph Drouhin)は、1880年創業のブルゴーニュを代表する名門ワイナリー。
本拠地はボーヌ。伝統と革新のバランスを取りながら、今なお家族経営で高品質なワインを造り続けています。
ジョゼフ・ドルーアン 日本におけるインポーターの歴史と変遷
ジョゼフ・ドルーアン社(Maison Joseph Drouhin)のワインは、日本市場で長年にわたり複数の輸入元によって取り扱われてきました。以下に、初期から現在までの主な歴代インポーターとその契約の背景をまとめます。
- 雪印乳業(~2003年) – 最初の輸入代理店。ドルーアン社と資本提携し、日本での販売を手掛けました。
- 三国ワイン(2003年~2024年) – 雪印乳業の撤退後に輸入権を引き継ぎ、約20年間にわたり販売を担当。
- サッポロビール(2025年~現在) – 現在のインポーター。戦略的パートナーシップ契約を結び、2025年から販売開始。
以下、それぞれの時期における詳細な経緯と背景を解説します。
雪印乳業:初期の輸入契約と資本提携
ジョゼフ・ドルーアン社のワインを日本で最初に本格的に扱ったのは雪印乳業(当時、日本を代表する大手乳製品メーカー)でした。雪印乳業はワイン事業に進出し、1980年代末から1990年代にかけてドルーアン社と強い関係を築きます。その象徴となったのが資本提携(ジョイントベンチャー)です。ドルーアン社が経営危機に陥った1993年、雪印乳業は同社の親会社「S.E.P.V.」社株式の51%を取得し、経営支援を行いました (Robert Drouhin & Family | Leaders of Wine | Wine Spectator’s 40th Anniversary)。この出資によりドルーアン社は雪印乳業の子会社的な位置づけとなり、雪印乳業が日本における独占輸入販売権を得ていたとみられます。
雪印乳業は輸入元としてドルーアンのブランド育成に努め、シャブリやブルゴーニュ各種ワインを日本市場に紹介しました。実際、1995年度(1995年4月~1996年3月)の同社輸入ワイン販売数量は前期比12%増と伸長し、看板ブランドの**「ジョセフ・ドルーアン」**は9%増と好調でした (輸入ワイン特集=雪印乳業、「J・ドルーアン」が好調 – 日本食糧新聞・電子版)。雪印乳業にとってドルーアンは主力の輸入ワインブランドとなり、その安定供給と販売には資本提携による密接な関係が寄与していたと言えます。
しかし2000年に発生した雪印集団食中毒事件など不祥事の影響もあり、同社は経営再建の一環で本業の乳製品に集中する方針を打ち出します (雪印乳:国内ワイン子会社を売却へ、売り上げ不振-海外合弁も見直し – Bloomberg)。ワイン事業の業績は2000年3月期に売上高約23億円をピークに、2002年3月期には約6億7千万円まで減少していました (雪印乳:国内ワイン子会社を売却へ、売り上げ不振-海外合弁も見直し – Bloomberg)。これを受けて雪印乳業はワイン事業からの撤退を決断します。また同時期、ドルーアン社自身が雪印側に資本比率引き下げ(持ち株買い増し)の打診を行っており、雪印乳業は提携先であるS.E.P.V社の持株比率を引き下げる意向を示しました (雪印乳:国内ワイン子会社を売却へ、売り上げ不振-海外合弁も見直し – Bloomberg)。具体的には、雪印乳業は2003年5月にドルーアン社親会社S.E.P.V.の株式保有割合を51%から41%へ減少させ、ドルーアン社およびS.E.P.V.を連結子会社から外しています (雪印乳業、酒類事業を終了、J・ドルーアンブランドは三国ワインへ移行 – 日本食糧新聞・電子版)。こうした資本関係見直しにより、ドルーアン社は約11年ぶりに経営の主導権を自社に取り戻すこととなりました(2004年にドルーアン家が株式の過半数を回復 (Robert Drouhin & Family | Leaders of Wine | Wine Spectator’s 40th Anniversary))。
雪印乳業は2003年9月末をもって酒類事業から撤退し、長年続いたドルーアン社ワインの輸入代理店契約も終了しました (雪印乳業、酒類事業を終了、J・ドルーアンブランドは三国ワインへ移行 – 日本食糧新聞・電子版)。この契約終了により、次の受け皿となる新たなインポーターが必要となります。
三国ワイン:輸入権の移行と長期販売体制
2003年、中堅ワイン輸入商社の三国ワイン株式会社(本社:東京都中央区)がジョゼフ・ドルーアン社の日本における独占輸入権を引き継ぎました。雪印乳業が酒類事業を終了するにあたり、同年7月から三国ワインでドルーアン社ブランドを取り扱うことが決定しています (雪印乳業、酒類事業を終了、J・ドルーアンブランドは三国ワインへ移行 – 日本食糧新聞・電子版)。これによりドルーアンの日本国内販売は三国ワインへバトンタッチされ、販売体制が維持されました。
三国ワインはもともと1999年設立の新興企業ですが、スペインの名門ワイナリーであるC.V.N.E社が100%出資するなど外資資本も活用し、積極的に成長していた輸入商社です。設立当初はチリやアルゼンチンなどニューワールド産ワインの取り扱いが中心でしたが、ドルーアンという伝統的ブルゴーニュのビッグブランドを獲得したことで、同社は「フランスなど伝統国ワインの充実が成長に不可欠」と判断し、ポートフォリオ拡充に舵を切りました (三国ワイン、ワイン品揃え加速、伝統国の商材充実へ – 日本食糧新聞・電子版)。実際、「昨年7月にフランス・ブルゴーニュ『ジョゼフ・ドルーアン』を取得した」ことでラインナップ強化に弾みがついたと日食新聞も伝えています (三国ワイン、ワイン品揃え加速、伝統国の商材充実へ – 日本食糧新聞・電子版)。ドルーアン社ワインは三国ワインの取り扱いブランドの中核となり、日本市場での販売が継続されました。
三国ワインとドルーアン社の関係は、雪印乳業時代とは異なり純粋な独占輸入契約という形態でした。資本提携や合弁事業は行わず、ドルーアン社は独立した家族経営を維持しつつ、三国ワインが日本総代理店として販売面を担う体制です。販売方針においても、プレミアムブルゴーニュブランドとしてのイメージ維持に双方が注力し、三国ワインは幅広いレンジのドルーアン製品(ブルゴーニュのリージョナルクラスから特級畑のワイン、さらにドルーアン家が米国で手掛けるオレゴン産ワインまで)を日本市場に紹介してきました。約20年間にわたり大きな変化もなく安定的な関係が続いたことから、契約満了まで良好な協調が保たれていたと考えられます。
しかし2020年代に入り、市場環境や各社の戦略の変化に伴い、新たな展開が訪れます。ドルーアン社は2024年に三国ワインとの契約を更新せず終了し、より大手で総合力の高いパートナーへ切り替える選択をしました。これにより、次のインポーターとしてサッポロビールとの提携が発表されます。三国ワインは看板ブランドであったドルーアンを失う形となりましたが、これは戦略上の契約移行であり、買収やトラブルによるものではありません。むしろドルーアン社側の意向で販売強化を図るためのポジティブな再編と受け止められました。
サッポロビール:現在の戦略的提携と狙い
サッポロビール株式会社は2024年、ジョゼフ・ドルーアン社と日本国内における販売契約を新規に締結することを発表しました (サッポロビールがフランスのワインメーカー、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとパートナーシップ契約締結 – Yahoo! JAPAN)。この契約は2025年1月15日以降有効となり、同日よりサッポロビールがドルーアン社(フランス本社)および関連する米国オレゴンのワイナリー(ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン)の製品計45アイテムを取り扱い開始します (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース) (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース)。サッポロビールにとって、海外トップクラスのワインメーカーとの提携は自社ワイン事業強化の重要な柱であり、本契約は単なる輸入販売契約に留まらず**「戦略的パートナーシップ契約」**と位置付けられています (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース)。
サッポロビールがドルーアン社と提携に至った背景には、同社の経営戦略があります。サッポロはビール大手としての販売網・ブランド力を活かしつつ、ワイン事業でも存在感を高めようと近年力を入れており、国内ワイナリー(グランポレールなど)の展開や海外銘柄の導入を積極化してきました。実際にサッポロビールはイエローテイル(オーストラリア)やシャンパーニュのテタンジェ(フランス)、**ベリンジャー(米国)**など、世界的ブランドの日本販売も手掛け始めています (ワイン | 商品カテゴリ一覧 – サッポロビール)。そこへブルゴーニュの名門であるジョゼフ・ドルーアンを迎え入れることで、同社のワインポートフォリオは高級フランスワインまで網羅し、一層充実することになりました。
契約の狙いについて、サッポロビールは公式発表で「ドルーアンブランドを当社ワイン事業の中核を担うブランドと位置づけ、ワイン事業の持続的な成長を目指す」と表明しています (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース)。また、「世界を魅了し続けるドルーアンブランドを通じて、新しい『お酒の魅力と可能性』を開拓していきたい」としており (サッポロビール、仏ワインメーカー「メゾン・ジョゼフ・ドルーアン」と販売契約|外食トピックス|業界情報|繁盛店の扉|サッポロビール)、プレミアムワインによる市場開拓に強い意欲を示しています。サッポロにとってドルーアンとの提携は、高品質ワイン市場でのプレゼンス向上と収益拡大のチャンスであり、ビール事業に偏りがちな売上構成を多角化する狙いもあると考えられます。一方のドルーアン社にとっても、サッポロという国内有数の酒類企業と組むことで、日本全国への流通網や販促リソースを得られるメリットがあります。サッポロの外食産業との繋がりや営業網は三国ワインに比べ桁違いに大きく、これまで以上に幅広い顧客層(高級レストランから百貨店・小売まで)へアプローチできるようになるでしょう。
現時点でサッポロビールとドルーアン社の間に資本関係は発表されておらず、契約形態は独占輸入販売契約とみられます。ただし「戦略的パートナーシップ」の名の通り、マーケティングやブランド方針について両社が緊密に協働する体制が敷かれる可能性があります。例えば、サッポロはドルーアン社のブランド価値を維持すべく、輸入ラインナップに特級・1級畑の高級ワインまで含めています (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース)。これは単なる数量拡大だけでなく、ブランドの格を重視した販売戦略を共有していることを示唆しています。
以上のように、ジョゼフ・ドルーアン社の日本におけるインポーターは雪印乳業 → 三国ワイン → サッポロビールと受け継がれてきました。それぞれの交代劇には、契約満了や企業戦略の転換、資本関係の見直しといった背景が存在します。雪印乳業時代は経営支援を伴う深い提携関係、三国ワイン時代は独立した家族経営を尊重した長期安定供給、そしてサッポロビールとの現在の提携は双方の戦略的メリットを追求する新たな展開と言えるでしょう。今後、サッポロビールの強力な販売力の下で、ジョゼフ・ドルーアンのワインが日本市場でさらに存在感を高めていくことが期待されています。
参考資料:
サッポロホールディングス プレスリリース(2024年) (メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとの戦略的パートナーシップ契約の締結について | サッポロホールディングス株式会社のプレスリリース)
雪印乳業とジョゼフ・ドルーアン社の提携・撤退報道(日本食糧新聞、2003年) (雪印乳業、酒類事業を終了、J・ドルーアンブランドは三国ワインへ移行 – 日本食糧新聞・電子版)
雪印乳業のワイン事業縮小に関する報道(Bloomberg、2002年) (雪印乳:国内ワイン子会社を売却へ、売り上げ不振-海外合弁も見直し – Bloomberg) (雪印乳:国内ワイン子会社を売却へ、売り上げ不振-海外合弁も見直し – Bloomberg)
三国ワインによるジョゼフ・ドルーアン取り扱い開始に関する報道(日本食糧新聞、2003年) (三国ワイン、ワイン品揃え加速、伝統国の商材充実へ – 日本食糧新聞・電子版)
サッポロビールとジョゼフ・ドルーアン社の販売契約締結発表(Yahoo!ニュース、2024年) (サッポロビールがフランスのワインメーカー、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとパートナーシップ契約締結 – Yahoo! JAPAN)