特別本醸造 超辛口 土佐鶴
一周回って、本醸造。造り手の「一手間」に触れる日常の美学
「フラッグシップは、いわばよそ行きの服だ。」 酒ビジネスの著者・高橋理人氏のコラムに触れ、私の日本酒に対する解像度がまた一つ変わりました。
かつては「純米こそが至高」という風潮もありましたが、アルコール添加という工程は、決して増量のためではなく、職人が酒の輪郭を整え、個性を引き出すための「最後の一手間」であるということ。その事実に立ち返ったとき、酒蔵の本質を最も雄弁に語るのは、実は日常に寄り添う「本醸造」ではないかと確信したのです。
今回対峙したのは、土佐鶴 本醸造 超辛口。
日本酒度+12という、その名に恥じぬドライなスペック。まずは「勉強」として、五感を研ぎ澄ませて外観からチェックします。
無色透明な液体ながら、グラスを伝う粘性は高く、エキス分の凝縮を感じさせます。香りはリンゴやメロンを思わせるカプロン酸エチル由来の華やかさ。8度という低温でのアタックは、アルコールのボリューム感がダイレクトに伝わり、昼下がりの喉を熱く刺激します。
この「熱さ」こそが、本醸造に馴染みのない方には敬遠される要素かもしれません。しかし、ワインと同様に日本酒もまた、温度とペアリングでその真価を開花させます。
この超辛口に合わせたのは、勤務先である「ラ・プリマヴィルタ」のスーシェフのレシピをオマージュした一皿。
「春キャベツとホタルイカ、碁石茶のクリームパスタ」

春キャベツの柔らかな甘みと、ホタルイカの肝が持つ濃厚な旨味。そこに、高知が誇る後発酵茶「碁石茶」特有の乳酸由来の酸味と収斂性をぶつけるという、モダン・ガストロノミー的な構成です。
この多層的な味わいのパスタに対し、土佐鶴の超辛口は見事な役割を果たします。 生クリームの脂分をケッパーの酸と共にスッと切り裂き、口内をリセットする「ウォッシュ効果」がありながら、ホタルイカの濃厚な肝の旨味を、アルコールの骨格が力強く受け止める。
「旨味を増幅させ、かつ余韻を美しく引き去る」
フラッグシップのような華美さはないけれど、食事のポテンシャルを最大化させる本醸造の潔さ。SAKE DIPLOMAへの道中で出会ったこの「日常着の美学」は、私の酒選びの基準をより深いものにしてくれそうです。
酒ビジネス https://amzn.to/3PHCnih
|
