深川ワイナリー東京「シャルドネ樽発酵」——スペックを超えたクラフトの価値を噛みしめる
1週間ぶりに抜栓したのは、日本ワインのサブスクリプションで届いた一本。東京都江東区、門前仲町に居を構える「深川ワイナリー東京」のシャルドネです。
シャルドネという品種は、樽熟成の有無でそのキャラクターが180度変わります。それゆえに選ぶ側の「今の気分」とミスマッチが起きると悲劇なのですが、このワインは非常に親切。エチケットに描かれた樽のイラスト、そして「シャルドネ樽発酵」という直球のネーミング。この潔い分かりやすさは、消費者にとって実にありがたい配慮です。
「3,980円」という価格をどう捉えるか
定価は3,980円。正直なところ、この価格帯になれば本場ブルゴーニュの良質な1本も射程圏内に入ります。コストパフォーマンスに対してシビアな視点を持つこともプロとして大切ですが、一方で「最小ロットの希少性」や「日本ワインが持つクラフト精神」は、単なる味わいの優劣だけでは測れない価値があります。
値段以上の悦びを見出すには、その背景にある造り手の想いまでを“噛みしめる”こと。それがワインを楽しむ醍醐味ではないでしょうか。
温度で花開く、ナチュラルな樽のニュアンス
セラー(14度前後)から出し、1時間ほど経った状態でグラスに注ぎます。
香りは非常に穏やか。公式の説明通り、10度〜12度、あるいはそれ以上の温度帯でこそ、その真価を発揮するタイプでしょう。
レモンやパッションフルーツの果実味の奥に、スモーキーなニュアンスや香ばしいトースト香が潜んでいます。特筆すべきは、その「樽感」の絶妙な塩梅。決して主張しすぎず、あえて着飾ったような不自然さもありません。非常にナチュラルで、素材に寄り添うような上品な仕上がりです。
独創的な味わいと、世界が認めた実力
一口含んで確信しました。これは、私が今まで経験したどのシャルドネとも異なる、唯一無二の味わいです。「ブルゴーニュが買える」といった比較論は、このワインの前では意味をなしません。深川ワイナリー独自の個性が、そこには凝縮されています。
- 第一印象: 芯のある苦味と酸味。
- ボディ: アルコール度数11%とは思えないほどのコクとボリューム感。
- ポテンシャル: 「DWWA 2025」での高評価も納得の、食事を引き立てる懐の深さ。
値段相応の厚みがしっかりと感じられ、飲み応えは十分です。
今夜のペアリング:小松菜のジェノベーゼ、修業の味を添えて

合わせた料理は、「小松菜のジェノベーゼパスタ」。
現在、私が研鑽を積ませていただいている『ラ・プリマヴォルタ』のスーシェフが考案したレシピを参考に、自宅の冷蔵庫にある食材で再構築してみました。
小松菜の葉をニンニクと共に、出汁を加えながらミキサーで滑らかなペーストに。沸騰したソースに麺を投入し、仕上げにギリシャヨーグルトで乳酸的なアクセントとタンパク質を補給。さらに山椒で立体的なスパイス感を出し、上質なオリーブオイルで香りを纏わせました。
理想と現実、そして「背中」から盗むもの
結果として、雰囲気は近づいたものの、味の骨格や完成度はスーシェフのそれには遠く及びませんでした。
しかし、この「届かなさ」を知ることもまた、今の私には必要なプロセスです。これからも現場で、スーシェフの背中を追い、その技術と空気感を少しずつ、貪欲に盗んでいきたい。一杯のワインと向き合うように、料理の深淵にも真摯に向き合っていこうと決意した夜でした。






