ミュスカデ セーヴル エ メーヌ シュール リー キュヴェ アルモニー ミシェル デロモー
Michel Delhommeau
参考小売価格:1480円
産地:ロワール
品種: ミュスカデ
購入元:ヴェリタス(楽天)
インポーター:ワインプレスインターナショナル
最後は2021年ヴィンテージ。
グラスに鼻を近づけた瞬間、わずかに湿ったような香りに「もしやブショネか?」と一瞬身構えました。ところが飲んでみてその疑念は一掃。むしろ私好みの“苦辛系”の味わいが口中にじわじわと広がり、いつの間にかこの3本の中で最も進みの早い一本になっていたのです。
ミュスカデというと、「軽い・爽やか・無個性」というイメージを抱かれがちですが、この2021年は明らかに違う。香りの第一印象こそ控えめながら、口に含めばしっかりとしたミネラル感とビターな旨味が広がり、しっとりとした和食や繊細なシーフード料理と完璧に寄り添います。
何より注目すべきは、この内容で定価1,500円以下という驚きのコストパフォーマンス。晩酌用の“万能ワイン”として、ミュスカデをここまで再評価したのは初めてかもしれません。
このワインを手がけるのは、パーカー92点やタンザー91点を獲得するなど、世界の評論家から高評価を得ている秀逸蔵「ミシェル・デロモー」。
ナント南部のモニエールというミュスカデ栽培の中心地に構える、3世代続く家族経営のドメーヌです。
土壌は「ガブロ(Gabbro)」と呼ばれる岩盤の上に石が多く混ざる特殊な地質。2013年からは完全オーガニックに移行し、区画ごとに丁寧に醸造を行うことで、それぞれのブドウの個性を引き出しています。
この2021年に感じられた“塩味を含んだミネラル感”や“奥行きのある苦味”は、まさにこのガブロ土壌と古木の低収量が生む賜物。シュール・リー製法によって旨味の層が厚くなり、爽やかなだけで終わらない複雑さを備えています。
実際、「ピペット・ドール(金のピペット)」という、フランスのミュスカデ・コンクールでも大賞を受賞した実績があり、同年最も優れたミュスカデのひとつとしても選ばれました。『アシェット・ガイド』でも2つ星を獲得するなど、その実力は折り紙つき。
今回の飲み比べで、ミュスカデは“似たような味”という先入観が音を立てて崩れ去りました。
2023年の蜂蜜リッチ系、2022年の柑橘フレッシュ系、そしてこの2021年の苦辛ミネラル系──まさに三者三様。それぞれが明確な個性を持っており、テロワールやヴィンテージ、造り手の哲学によってここまで違いが表れるのかと驚嘆せざるを得ません。
こういった“横比較”は、ワインの本質を知る上で非常に有効です。
ワイン会や試飲会で業界人が積む経験も重要ですが、私の場合は身銭を切って、一滴たりとも無駄にしない覚悟で味わっている分、その吸収率は相当なものだと信じています。
ミュスカデ、あなどれません。むしろ、食卓の常連として本格的に復権させたいと感じた、そんな三連戦でした。
本日の組み合わせ
庶民のお酒ランク(詳細)
今回のワインは:Bランク (24年3月より基準改定)
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