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フランス/ロワール地方

AOCカンシー初体験。ドメーヌ・タタン『ヴィエーユ・ヴィーニュ』は5千円の価値があるのか?

ドメーヌ・タタン カンシー キュヴェ・ヴィエーユ・ヴィーニュ

Domaines Tatin Quincy Cuvee Vieilles Vignes

参考小売価格:4730円

産地:ロワール地方

品種: ソーヴィニヨン・ブラン

購入元:ウメムラ(楽天)

インポーター:エムエムズィー

今日は久々に、「貴族のワイン研究所」として筆をとります。なぜかといえば、本日は平日夕方、仕事を終えた疲れが身体に残る時間帯。そんなシチュエーションにおいて、5千円クラスのワインを選ぶというのは、庶民の振る舞いではありません。

もちろん私もこのワインを開けるにあたっては葛藤がありました。届いたときは「何か特別な日に飲もう」と心に決めていたのです。それが一週間も経たぬうちに、どうしてもボトルの誘惑に勝てず、手が伸びてしまった理由。それは、エチケットの佇まいに他なりません。

自然派の気配をたっぷり含んだ、柔らかく、しかし意思を感じるデザイン。そのボトルは、「今すぐ抜栓してくれ」と目で訴えかけてきたのです。

香りと味わい:上品な二面性

まず香りは控えめ。鼻をグラスに深く近づけてようやく捉えられる桃やマスカットといったフルーティな香調。しかし口に含むと、驚くほどのドライさとビター感が支配します。

一見、粘性がありそうな外観とは裏腹に、ボディは軽やか。アルコール度数は13%と表示されていますが、アルコール感はほとんど意識されません。個人的に「アルコールを感じさせずに度数が高い」というのは、上質なワインのひとつの指標です。

とはいえ、これほどスイスイ飲めてしまう5千円ワインというのも、どこか腑に落ちない部分があるのも事実。高価格帯ならではの“余韻や奥行きの深さ”をもっと感じたいというのが率直な印象です。

生産者の背景:職人的家業と世代交代

さて、このワインを手がけたのは〈ドメーヌ・タタン〉。フランス・ロワール地方のカンシーとルイィに畑を持つ家族経営のドメーヌです。1950年代までは自家消費のワインしか造っていなかったという過去を持ち、1988年にジャン・タタン氏が正式にドメーヌとして立ち上げました。

現在は娘のマルシア・タタンが中心となって運営を担い、天然酵母の使用、ピノ・グリやピノ・ブランの新規植樹、スパークリングの開発など、次世代らしい柔軟なアプローチを積極的に取り入れています。

また、彼女の夫は料理人ということもあり、日常的に「食との相性」を突き詰めながらワイン造りが行われているという点も興味深いポイントです。

ワインの技術的特徴と評価

今回の「カンシー キュヴェ・ヴィエーユ・ヴィーニュ」はソーヴィニヨン・ブラン100%。古木のブドウを手摘みで収穫し、それぞれの区画ごとに丁寧に醸造。発酵は温度管理されたステンレスタンクで行い、バトナージュを施しながらシュール・リー熟成を経ています。

味わいとしては、グレープフルーツを中心とした柑橘のニュアンス、青リンゴやアプリコット、アカシアの香り、さらにミントやパプリカといった清涼感ある要素も。ミネラル感が豊かで骨格があり、熟成にも耐えうるポテンシャルを感じさせます。

総評:情報を含めてこそ、真価に気づく

最初の印象だけでは「高い割にあっさりしてるな」と思ったのは事実。でも、それはこのワインが“情報とともに楽しむタイプ”だからでしょう。

AOCカンシーという産地の個性、ドメーヌ・タタンの哲学、そして娘マルシアによる新しい風。それらの背景を知ったうえで再びグラスを傾けると、この一杯の意味合いはまるで異なって感じられます。

初めてのカンシー体験として、十分に価値ある1本でした。

本日の組み合わせ

庶民のお酒ランク(詳細

今回のワインは:Dランク (24年3月より基準改定

ABOUT ME
井原大賀
1984年 高知生まれ ワイン系YouTuber。日本初のPodcastワイン番組をプロデュース。令和以降アマゾンで日本一読まれているワイン電子書籍の著者。年間40万ml以上ワインを飲む本物のワインガチ勢が語る再現性の高いワインライフ。お仕事のお依頼、コラボ、PR案件お待ちしております! info@grapejapan.com