KWV コンコルディア 赤
KWV Casa Da Concordia Red
参考小売価格:1000円ぐらい
産地:南アフリカ
品種: CS、シラー、メルロなど
購入元:アマゾン
インポーター:国分ワイン
アマゾンのセールで手に入れた、まさに“実質タダ”のワイン。送料込みで650円という信じがたい価格である。関東から四国までワイン1本を配送すれば、それだけで1000円近くはかかる。つまりこれは、「ワインに送料がついてくる」どころか、「ワインを頼んだら300円もらえる」ような不思議な取引にすら見える。
そんな不可思議な価格のワインの正体は、南アフリカの名門KWV(ケー・ダブリュー・ヴィー)。ピザを頬張る夜に開けてみた。
品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、メルロー、ピノタージュ。濃厚黒ブドウのオールスターで構成された、典型的な大衆向けブレンドだろうと予測していたが──それがいい意味で裏切られる。
香りはブルーベリーガムのようなダイレクトな果実感に、わずかなハーブのニュアンスが加わることで、安価ワインにありがちな単調さが見事に回避されている。そして口に含むと、まず最初に「渋い!」と叫びたくなるような強めのタンニンが襲ってくる。だがそれが実に心地よい。ピザのような脂と甘みのパンチが強い料理には、こうした渋みが舌のバランスを取り戻してくれる。さらに酸味もしっかりとあるため、口中をリセットしながら次のひと口を欲しくさせる。これはまさに中和力の高い食中酒だ。
KWVとは「Koöperatieve Wijnbouwers Vereniging」の略で、南アフリカのワインとブランデー産業を支えてきた老舗企業であり、最大級の輸出者でもある。現在ではイギリス、オランダ、ドイツ、アメリカ、日本を含む100カ国以上にワインを送り出す、南アフリカの顔とも言える存在だ。イギリスの飲料専門誌『ドリンクス・インターナショナル』では、2019年に「世界で最も賞賛に値する南アフリカワインブランド」として評価されている。
今回のボトルに記された『Casa Concordia(カサ・コンコルディア)』とは、『Casa=家』と、『Concordia=共に心を合わせる』というラテン語の語源から成る言葉。KWVの“家”である本社の建物がラベルに描かれており、先駆者たちと調和・協調しながら歩んできた歴史への敬意が込められている。
なるほど、この価格であっても、そこにはブランドの矜持が詰まっているというわけだ。私は常々、安くてバランスの悪いワインにも意味があると考えているが、今回はその仮説をあらためて裏付けられた気がする。