参考小売価格:2000

産地:北海道

品種: ミュラートゥルガウ

購入元:アマゾン

製造元:サッポロビール

今日も日本ワインのグランポレールシリーズ。今回の余市ミュラー・トゥルガウは、個人的にドイツのオルタナティブとして見ても面白い存在だと思っている。

というのも、以前に余市のケルナーを新年の1本目として飲んだとき、遅摘みの甘口が想像以上に完成度が高かった。後日、牛しゃぶを胡麻だれにつけて食べながら合わせたら、甘味が脂に負けず、酸が後味を整えて、香りも邪魔をしない。甘口ワインを食卓に連れてくるときの成功体験として記憶に残った。だから余市の甘口には、こちらの期待値が最初から乗ってしまう。

一方で、ミュラー・トゥルガウに対して自分が持っているイメージは、軽やかでフルーティー、すっきり寄りというものだった。そこに甘口表記が乗ってくると、どの方向に振れているのかが読みにくい。甘口と書かれているだけで、身構えながら飲むことになる。

色調はかなり淡い。見た目だけなら辛口の白を連想する透明感で、重さの気配は薄い。ところが香りを取ると、意外にソーヴィニヨン・ブランを思わせる要素が出てくる。グレープフルーツのような柑橘、パッションフルーツのニュアンス、レモンの輪郭。軽やかにまとめるというより、香りの方向は分かりやすく華やかだ。

ただ、ひと口目で印象が変わった。甘い。最初の当たりががっつりジュース寄りで、果実の甘さが前面に出る。香りの華やかさと甘味の乗り方が一致しているので、飲みやすさはある。ワインに飲み慣れていない人が、これは好きと言いそうな味だと思った。

その反面、食事と合わせる難易度は上がる。自分は今日、カニ鍋にしようと思っていたが、この甘さだとミスマッチになる可能性が高いと感じた。鍋は塩味や旨味を軸に組み立てることが多く、そこに分かりやすい甘味が強いワインを持ってくると、甘味が浮くか、繊細な出汁の線をぼかすか、どちらかが起きやすい。甘口を食中で成立させるなら、甘味を受け止める要素が料理側に必要になる。脂、胡麻だれ、甘辛いタレ、スパイス、フルーツを使ったソース、あるいは塩味を強めにしてコントラストで飲ませるなど、いずれも設計が要る。

今回の1本で厄介なのは、ミュラー・トゥルガウという品種の印象が、自分の中で揺れたことだ。これまで自分が抱いていたミュラー・トゥルガウ像は、もっと淡く、もっと軽く、もっと食事に寄り添う方向だった気がする。ところがこのワインは、香りは華やかで、味は甘味が主役。自分の中の基準がブレたというより、基準にしていたミュラー・トゥルガウが、そもそも一部のスタイルに偏っていたのかもしれない。

ミュラー・トゥルガウは、産地や造り手の狙いで表情が変わる。ドイツ系の文脈で語られることが多い品種だけど、日本の冷涼地でどう表現されるかは別の話になる。甘口表記の中身も、残糖の多さだけでなく、酸とのバランス、香りの出し方、アルコールの設計で体感が変わる。今回が基本形なのか、それとも自分が今まで飲んできたミュラー・トゥルガウが別の方向に寄っていたのか。判断するには、結局、飲む本数を増やすしかない。

この1本は、迷うきっかけになったワインだった。余市の甘口に期待していたからこそ、食卓に置く難しさも含めて、印象が強く残った。

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井原大賀
1984年 高知生まれ ワイン系YouTuber。日本初のPodcastワイン番組をプロデュース。令和以降アマゾンで日本一読まれているワイン電子書籍の著者。年間40万ml以上ワインを飲む本物のワインガチ勢が語る再現性の高いワインライフ。お仕事のお依頼、コラボ、PR案件お待ちしております! info@grapejapan.com