アンジュ ブラン ハーフドライ
ANJOU DEMI-SEC DOMAINE ASSERAY
参考小売価格:2199円
産地:ロワール・アンジュ
品種: シュナン・ブラン
購入元:リカオー店頭
インポーター:ルミノ・ヴィーノ
ロワール地方のワインにじっくり向き合う月間もいよいよ佳境。今月だけで、ソーヴィニヨン・ブランを5種、カベルネ・フランを3種と試してきました。品種ごとの個性や、生産者ごとの表現の幅に改めて驚かされながら、今回はロワールを語る上で欠かせないもう一つの品種──シュナン・ブランに焦点を当ててみます。
選んだのは、**アンジュー地区のシュナン・ブランのハーフドライ(半辛口)**タイプ。
この「ハーフドライ」という表記、意外とくせ者です。辛口ワインを日常的に飲んでいる身からすると、こうした中途半端な分類のワインは、実際には「甘口」と感じられることが少なくありません。今回もインポーターの説明欄には「半甘口」と明記されており、“これは甘いワインだ”という心構えをもって臨むことにしました。
なぜ構える必要があるのか?
それは、辛口だと思って飲んだワインが甘かったときのギャップが、味わいの印象を大きく損ねるからです。逆に、最初から甘口を想定していれば、その豊かさやコクを素直に楽しむことができます。ワインの味わいは、先入観と驚きのバランスで成り立っているのかもしれません。
香りはまさに蜂蜜──柔らかな甘みと酸の調和
グラスを傾けた瞬間に広がるのは、蜂蜜のような濃厚な香り。それに続いて、洋梨や白桃のようなやさしい果実香がふわりと立ち上ります。味わいは確かに甘みが主体ですが、しっかりとした酸が全体を引き締めており、ただ甘いだけの“だらしなさ”は皆無。むしろ輪郭のある味わいに仕上がっており、食事との相性も十分に成立します。
今回のペアリングは、ナスのグラタン。トロトロのナスの食感と、じんわり染み出す旨味、そしてチーズのコク。そこにこのシュナン・ブランの甘酸っぱさが絶妙に絡み、口の中に深い一体感が生まれました。芋類やナスのように、自然な甘みや柔らかな食感をもつ野菜との相性は抜群です。
甘口への再評価──「覚悟」があれば楽しめる
かつては、私も「甘口=安っぽい」と無意識にレッテルを貼っていた時期がありました。しかし、甘さというのは決して単なる嗜好の問題ではなく、シーンや心理状態、そして“覚悟”の有無によって大きく印象が変わるものです。
甘いものを飲むと決めて、甘さを迎え入れる準備が整ったとき、このタイプのワインは驚くほど豊かな表情を見せてくれます。シュナン・ブランの魅力を知るには、こうした“ハーフドライ”というグレーゾーンにこそ、本質が隠れているのかもしれません。
庶民のお酒ランク(詳細)
今回のワインは:Cランク (24年3月より基準改定)
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