参考小売価格:4900円ぐらい

産地:長野

品種: シャルドネ

購入元:Amazon

先月開催されたAmazonセール。普段はなかなか手の届かないワインも、こうした機会にはつい食指が動いてしまいます。今回私が手にしたのは、日本ワインの先駆者、シャトー・メルシャンが誇るフラグシップの一つ、「テロワールシリーズ椀子(まりこ)シャルドネ」です。

日本の「適所適作」を体現するヴィンヤード

シャトー・メルシャンが掲げる“適品種・適所”というコンセプト。山梨、長野、秋田、福島と、各ブドウ品種に最適な土地を厳選し、その個性を最大限に引き出すのが「テイスティングシリーズ」です。

舞台となるのは、長野県上田市丸子地区の陣場台地に広がる自社管理畑「椀子ヴィンヤード」。

かつてこの地が「丸子(まりこ)」と呼ばれていたことに由来するこの畑は、数々の国際的な評価を受け、今や日本を代表するシャルドネの産地として知る人ぞ知る存在です。

通常価格は5,000円前後。今回はセールにより3,330円で入手できましたが、価格帯としてはブルゴーニュの村名クラス(ヴィラージュ)とも比肩する、まさに「超高級ライン」と言えるでしょう。

期待と現実:温度が暴くワインの真価

期待を胸に、冷蔵庫から取り出して30分。春の暖かさを感じるこの季節、キリッと冷えた白ワインを愉しむのは至福のひとときです。しかし、この「冷え」が、ワインの表情を複雑なものにしました。

  • 抜栓直後: アルコール度数12.5%と骨格はしっかりしているものの、低温状態では香りが閉じてしまい、本来あるべき奥行きや立体感が立ち上がってきません。感じられるのは鋭い酸味と苦味の主張ばかり。期待していた上品な樽香やバニラ、ナッツのニュアンスは影を潜め、フルーツの要素もマンゴーの片鱗を見せる程度。
  • 温度の変化: 時間が経ち、室温に近づくにつれて、ボディのふくよかさやポテンシャルの断片は見え隠れし始めました。しかし、価格に対する満足度が比例しているかと言えば、率直に言って疑問が残ります。

「テロワール」という言葉の裏側にあるもの

世界的な賞を数多く受賞しているこのワインに対し、今回のような印象を抱いたのはなぜか。

個体差による状態の劣化も否定できませんが、以前、グランポレールの長野シャルドネを飲んだ際にも似た感情を抱いたことを思い出しました。

ここで一つの問いが生まれます。

「テイスティング(土地の味)」を追求するあまり、飲み手に対する「美味しさの提供」が二の次になってはいないか。

日本ワイン、とりわけメルシャンのような大手が手掛ける高級ラインには、「誰が飲んでも納得できるクオリティ」を期待してしまいます。「これがこの土地の個性(テロワール)だ」という言葉が、時として飲み手の期待からの逃げ場になってほしくない——。一人のワインファンとして、そんな切実な願いを抱かずにはいられません。

日本ワインの難しさと可能性

正直なところ、ワイン初心者の方にこの価格帯の日本ワインを勧めるのは、現状では少しためらってしまいます。

例えば山形・高畠ワイナリーのように、5,000円という価格に対して「圧倒的な完成度」というゴールを明確に提示してくれる造り手も存在します。一方で、今回のように「土地の姿」を色濃く反映したワインを愉しむには、飲み頃の判断や温度管理、そして何より飲み手側のリテラシーが試されるのも事実です。

今回の体験は、私にとって「飲み頃」と「テロワール」の深淵を改めて考えるきっかけとなりました。これからも多くのワインと向き合い、その真実を掴んでいきたいと思います。


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ABOUT ME
井原大賀
1984年 高知生まれ ワイン系YouTuber。日本初のPodcastワイン番組をプロデュース。令和以降アマゾンで日本一読まれているワイン電子書籍の著者。年間40万ml以上ワインを飲む本物のワインガチ勢が語る再現性の高いワインライフ。お仕事のお依頼、コラボ、PR案件お待ちしております! info@grapejapan.com