花車(日本ワインにしよう!オリジナル)
参考小売価格:5800円
産地:大阪
品種: メルロ
購入元:日本ワインにしよう!
製造元:河内ワイン
日本ワインにしよう!のサブスク限定ワイン、今月は大阪の河内ワインさんのメルロです。
加入したのは今年の夏頃だったと思います。魂が込められて企画されているワインなので、気軽に開ける気分になれませんでした。じっくり味わえる日、時間がある日、頭の中のノイズが減っている日に飲みたいと思っているうちに、10月のワインすらまだ消費しきれていない状況になっていました。年末になってようやく現実に追いつかされ、慌てて抜栓する流れになったわけです。
ただ今回は、開ける理由がありました。未編集の動画が溜まりに溜まっていて、作業のことが常に頭を占領していたのですが、それがほどほどに片付いてきました。集中力の残量が戻ってきたタイミングで、ワインに向き合える状態になったのです。
メルロ自体も久しぶりで、楽しみは大きかったです。しかもフランス産のトロンセ樽で1年熟成とのこと。樽が前に出すぎると飲み手が疲れますが、うまく噛み合うと果実の上品さを底上げしてくれます。今回の印象は、まさにその方向でした。
まず色調は薄めでした。勝手に濃い赤を身構えていたので、このギャップが心地よいです。ワインに小慣れてくると、赤ワインは濃いほど偉いという単純な価値基準から離れていきます。薄い色の中に情報が詰まっているタイプの方が、こちらの集中力を引き出してくれることがあります。
香りは上品な赤系果実が主体でした。上品に感じる理由は、バニラの香りの扱いが絶妙だからだと思います。取ってつけた甘さではなく、果実の奥にほのかに溶け込んでいます。樽を感じるのに、樽を押し付けられない。そのバランスが心地よかったです。
提供温度は12度にしました。赤としてはやや低めですが、このワインの色調や酸の立ち方を考えると理にかなっていました。香りが散りすぎず、赤い果実の輪郭が保たれます。温度が上がっていく過程も含めて、変化を追える飲み方になります。
味わいはタンニンと酸味がしっかりめでした。口に含んだ瞬間に骨格が立ち上がるタイプで、単体で完結するというより食事で化ける気配が強いです。後味にほのかに甘味が来ますが、甘口という意味ではなく、果実味の丸みが余韻の最後に残って口の中をなだめてくれる感覚でした。
そこで今回は、きださいじさんのレシピで合わせていきます。きださいじさんは、YouTubeチャンネル ソムリエの舌はめんどくさい を運営されている方です。分解して感じてしまうソムリエ的な面倒くささを、料理の設計に落とし込んでくれるので、こういう酸とタンニンがきちんとした赤が一気に整う瞬間を期待できます。
年末の追い込みで開けたのに、焦って飲む気にはなりませんでした。グラスの中で温度が少しずつ上がっていくのを見ながら、香りと味わいのバランスが動くのを待ちます。編集で削れていた神経が、ようやくワインの側に戻ってきた夜でした。






