クロ・ド・ラ・モレニー パ・ド・ラ・コリーヌ ルージュ アンフォラ
Clos de la Molenie
参考小売価格:4950円
産地:ボルドー
品種: メルロ
購入元:ウメムラ(楽天)
インポーター:豊通食料株式会社
今夜は無性にハンバーグが食べたくなった。となれば、しっかりとした赤ワインを合わせたくなるのが自然な流れ。しかし、セラーを覗いてみると、肝心の“気軽に開けられる安旨赤”が見当たらない。困った。
普段、私が手がける家庭料理のグレードを考えると、せいぜいワインは2,000円以下で十分。むしろ、そのあたりが料理との格としてもちょうどいい。だが今夜は、冷蔵庫の都合ではなくワインセラーの都合に料理が合わせられる羽目になってしまった。
白ワインやオレンジワインでハンバーグを流し込むのは、さすがに違う。双方にとっての“機会損失”である。そこで、意を決して目をつけたのが、ストックの中でも異彩を放っていた一本。価格5,000円、しかも“情報”のパンチがすごい。
Clos de la Molenie(クロ・ド・ラ・モレニー)
話題の“新世代ボルドー”生産者で、サンテミリオンでの10年の醸造経験を持つ夫と、ビオディナミ栽培のコンサルをしていた妻という、ナチュラル系ワイン愛好家にはたまらない背景を持つ若き夫婦のプロジェクト。
所有する17haの中から、特に出来の良かった6ha分のみを自社ボトルとして使用。他はすべて葡萄売り。ラベルや仕様もこだわり抜かれており、ブルゴーニュ瓶に蝋キャップというアルティザン・スタイル。しかも全工程アンフォラ醸造というから、そりゃワインマニアが黙っていないわけだ。
……で、そんなワインを「今夜はハンバーグか〜」というテンションで開けるのは、どうなのか?
正直なところ、味わいに感動して涙が出る──ということはなかった。確かに、土のようなミネラル感、ミント、青野菜のニュアンス、そしてピチピチとした黒系果実が渾然一体となっていて、味わいは複雑で深い。でも「おぉ、これは……!」と震えるほどではなかった。
というのも、こうしたワインは“物語と一緒に飲むもの”だと思うのだ。生産者の哲学、造りへのこだわり、ボトルに込められた思想――そういった情報を共有できる相手がいてこそ、真のポテンシャルが花開く。
一人で黙々とハンバーグを食べながら飲むには、ちょっとだけ寂しい存在だった。
とはいえ、開栓から時間が経つにつれてタンニンは丸くなり、酸も穏やかに。インターバルを空けてボルドーグラスで改めて向き合うと、なるほど確かに良いワインだ。
「最初の一杯をいつものペースで飲んでいたら、高いだけでピンとこなかっただろうな」と思うと、やはりワインとの向き合い方も大切なのだと再認識する夜となった。
本日の組み合わせ
庶民のお酒ランク(詳細)
今回のワインは:Cランク (24年3月より基準改定)
|