長野 安曇野池田シラー 2017 グランポレール

参考小売価格:5600円

産地:長野

品種: シラー

購入元:アマゾン

製造元:サッポロビール

今日はクリスマスイブなので、ちょっといいワインを飲みます。選んだのはグランポレールシリーズの安曇野池田シラーで、入手はアマゾンのブラックフライデーセールでした。雑誌でもよく取り上げられますし、有識者の間でも評価が高いボトルです。定価で5000円を超えてくるクラスなので、少なくとも骨格が崩れたようなワインではないだろうという安心感もありました。クリスマスといえば泡という空気はありますが、今夜は赤を開けたくなりました。キリストの血がワインとして語られることがある、という連想も手伝って、祝祭の夜に赤を選ぶのは自分の中で筋が通っている気がしたのです。

抜栓してすぐにグラスへ注ぎ、温度は14度のまま直球で飲みました。外観は意外と淡く、透け感があります。ただ薄いというより、熟成の表情が色調の変化として出ていて、8年の時間を感じさせるわずかなオレンジを含んだガーネットです。グラスの縁に向かって自然なグラデーションが出て、過剰に主張しないのに手入れの行き届いた印象があります。香りはベリー系が先に来ますが、甘さで押すタイプではなく、赤い果実の輪郭がきれいに立ち上がります。そこにシダのような青いニュアンスや赤い花が重なり、奥の方からスパイスやハーブが静かに出てきます。情報量は多いのに散らからず、心地よくエレガントにまとまっていて、飲む前から気分が整う香りでした。

口に含むと、1口目から美味いやつだとわかります。口の中で転がしたときに、歯茎がきゅっと鳴るようなタンニンが来るのですが、それが不快ではなく、むしろ心地よい緊張感として残ります。酸とのバランスがよく、ベリー系の甘さが芯を支え、そこにスパイスのパンチが入って味わいが平面になりません。14度というやや低めの温度でも骨格が痩せず、輪郭が保たれたまま立体感が続くのは、このワインの設計の強さだと思いました。

このシラーは、ローヌのようにパンチで押し切る方向でもなく、オーストラリアのように濃厚で甘さを前面に出す方向でもありません。上級日本ワインらしい繊細さがありながら、シラーとしての芯もきちんとあって、その結果としてペアリングの守備範囲が肉に閉じないのが魅力です。一方で、舌がワインに慣れていない人だと、しょっぱ辛いだけの味わいに感じる可能性はあります。タンニンと酸、スパイス感が正面から出てくるので、受け取り方によっては硬く見えるからです。ただ、そういう人ほど肉と合わせた瞬間に良さがわかりやすいはずで、脂とたんぱくがタンニンをほどき、果実とスパイスの輪郭が前に出てきます。濃いワインが苦手な人やシラーが苦手な人にこそ試してほしいと思えるのは、強さではなく整い方で勝負してくるタイプだからです。

直飲みという率直な飲み方でも崩れず、むしろ素の状態で美点が見えたのは印象的でした。クリスマスの夜に赤を選ぶという個人的な物語を背負わせても、きちんと受け止めてくれるワインでした。

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井原大賀
1984年 高知生まれ ワイン系YouTuber。日本初のPodcastワイン番組をプロデュース。令和以降アマゾンで日本一読まれているワイン電子書籍の著者。年間40万ml以上ワインを飲む本物のワインガチ勢が語る再現性の高いワインライフ。お仕事のお依頼、コラボ、PR案件お待ちしております! info@grapejapan.com