トラピチェ アスティカ シャルドネ
TRAPICHE ASTICA CHARDONNAY
参考小売価格:1240円
産地:アルゼンチン
品種: シャルドネ
購入元:ローカルスーパー
インポーター:国分ワイン
近所のスーパーでふと目に留まった一本の白ワイン。値段も見ずにカゴに放り込んだのですが、帰宅後にラベルをよく見ると、どうやら定価は1200円ほど。もともと手に取りやすい価格帯ですが、それが半額の600円で入手できたというのだから、飲む前から勝負は決していたも同然です。
しかもアルゼンチン産。
この国のワインが持つ底力は、二千円以下ワイン愛好家であれば一度は実感しているはず。チリやイタリアのように市場の認知度が高いわけではありませんが、「価格以上の満足度」という点では、私にとってこのふたつの中間に位置づけられる存在です。
今回のシャルドネも、まさにそんな“期待の中間勢力”の面目躍如といった印象。フレッシュな果実味に、キレのある酸が心地よく調和し、アルコール度数はしっかりあるにも関わらず、アルコールの角が立たない。むしろボディの厚みが全体を包み込むような安定感すら感じられます。
飲んでいてふと思いました。「これ、もしかして“実質シャブリ”なのでは?」
というのも、シャブリとはフランス・ブルゴーニュ地方の最北端に位置するアペラシオンで、生産されるのはすべてシャルドネ。冷涼な気候の影響で、柑橘類や青リンゴを思わせるフレッシュな果実味と鋭い酸、そしてミネラル感が際立つのが特徴です。一部高級キュヴェを除き、樽を使わないシンプルな造りが基本となっており、世界中で「ピュアで引き締まった白ワイン」の代名詞として愛されています。
今回のアルゼンチン・シャルドネも、方向性としてはまさにその“オルタナティブ・シャブリ”。もちろん本家のような石灰質土壌から来る鋭いミネラルの輪郭や、冷涼さゆえの張りつめた緊張感までは再現されていませんが、600円でこれだけの要素が揃っていれば、十分代替として楽しむに足るでしょう。
新世界のシャルドネを飲む際に悩ましいのは、そのスタイルの幅広さ。樽をしっかり効かせたリッチなタイプもあれば、今回のように果実味と酸を軸とした軽快なものもあり、事前情報がないと“賭け”に近い感覚を覚えることもしばしばです。幸いこの一本には、裏ラベルに「果実味主体のフレッシュタイプ」と明記されており、その日の気分に応じて安心して選べるという点も高評価でした。
シャルドネという品種は、栽培可能地域の広さゆえに、生産者の意図がもっとも色濃く反映される品種でもあります。「好きなはずのシャルドネなのに、今日はなんだか合わないな」という体験が何度もある一方で、そういった“ズレ”が少なくなっていくと、自分の味覚が育ってきたことを実感できる。まさに「ワイン的自己成長」を味わえる品種の筆頭格です。
ともあれ今回のワイン、600円という価格を考えれば、もはや“掘り出し物”の域を超えています。
下手なシャブリを選ぶより、むしろこちらの方が幸福度が高いかもしれません。
——シャブリなんて、はじめからいらんかったんや!
本日の組み合わせ
庶民のお酒ランク(詳細)
今回のワインは:Bランク (24年3月より基準改定)
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