ミルーナ・ビアンコ・テッレ・ディ・サヴァ
MILUNA BIANCO (Terre di Sava) Vino da Tavola
参考小売価格:800円
産地:イタリア、プーリア州
品種: マルヴァジア、シャルドネなど
購入元:ローカルスーパー
インポーター:日本酒類販売
近所のスーパーで見つけた、いわば“救済案件”──半額の投げ売りワイン。もともと定価でも千円を切る価格帯なので、今回はたったの400円で手に入れた。つまり、ワンコイン以下でワイン1本。この時点でテンションはかなり上がっている。
銘柄は「ミルーナ」。知る人ぞ知る、南イタリア・プーリア州産の優良旨安ワインだ。手がけるのは、1962年に設立された協同組合“Terre di Sava(テッレ・ディ・サーヴァ)”。この地域の伝統的な地場品種を中心に、かつては栽培・供給のみを行っていたが、近年になって自社瓶詰めワインの生産を開始。南イタリアらしいフルーティで明快な味わいが世界的に評価され、現在では1,200を超える栽培農家と契約を結び、合計1,500haもの畑を運営しているという、まさに“地元集合知の結晶”のような巨大生産者に成長している。
そんなワイナリーが生み出すこの白ワイン──使用されているのは、マルヴァジーア・ビアンカ、シャルドネ、ボンビーノといった南イタリアならではの土着品種のブレンド。しかも、ただのブレンドではない。熟練農家による精緻な栽培と、若手醸造家の革新的な技術が掛け合わさることで、プーリアのテロワールと果実味を余すことなく表現している。世界70カ国に輸出されているというのも納得のクオリティだ。
冷蔵庫でキンキンに冷やしてグラスに注ぐと、立ち上がるのは南国フルーツのアロマ。パイナップル、マンゴー、レモンと、甘やかで濃密な香りが広がる。口に含めば、しっかりとしたコクとボディ。重心が低めで、冷涼な白とはまったく異なる、陽気で包容力のある味わい。さすがは南イタリア──太陽と大地のパワーが液体に変換されているような、そんな感覚すらある。
そして何よりも驚いたのは、そのバランス感。濃密さのなかに適度な酸が溶け込み、飲み疲れせず、単体で飲んでも破綻がない。むしろ、料理と合わせるよりも、ワイン単体でじっくり向き合いたくなるような完成度。しかしその飲みやすさゆえに、「ジュースっぽい」「軽すぎる」と感じる人もいるかもしれない。ただ、私にとっては間違いなく、今年飲んだ千円以下ワインの中でトップクラスの一杯だった。
価格、香り、味わい、そして背景にあるワイナリーの哲学と規模感──すべてが噛み合っている。「安いから美味しくない」ではなく、「安いのにここまでやるのか」と驚かされる体験だった。輸入コストや関税を考え始めると、もはやこれは“無料体験”に近い。
こうしたワインとの出会いがあるから、地元スーパー巡回はやめられないのだ。