グランポレール甲州

参考小売価格:2300円

産地:?

品種: 甲州

購入元:アマゾン

製造元:サッポロビール

2025年の飲み納めは、日本ワインの甲州を2本で飲み比べすることにした。片方はステンレスタンク熟成と明記された甲州。もう片方はラベルに樽発酵と書いてある甲州だ。樽熟成ではなく樽発酵という表記は少し気になるが、造りの方向性が違う2本を並べると、甲州の輪郭がいちばん見えやすい。

今日が12月29日。ここで日本ワインを挟んで、最後は日本酒を飲みながら今年を締めるつもりでいる。体感として、今年は前年よりワインの本数が約半分まで落ちた。理由は単純で、ワインが高くなった。単価を上げたこともあるし、市場全体の値上がりもある。手元のステンレスタンク熟成の甲州は定価2500円で、セールで2000円前後で買った。それでも今の感覚だと、これですら安ワインに見えてしまう。値札の印象が変わると、味の受け取り方まで動く。今日はそのバイアス込みで、ちゃんと味を取りにいく。

温度条件はこうだ。12度でストックしていたボトルを、飲む30分前に冷蔵庫へ。よくある冷蔵庫キンキンの状態ではなく、冷えすぎを避けつつ、酸の輪郭は締めたい設定にしている。甲州は温度で表情が変わりやすいから、ここを押さえておくと話がブレない。

まずはステンレスタンク熟成側から。色調はかなり淡い。見た目だけで水っぽそう、と一瞬思う。ただ、香りは薄くない。主体は柑橘で、グレープフルーツとレモンが中心に立つ。立ち上がりが素直で、余計な飾りがない。

口に含むと、酸がいきなり前に出る。支配力が強い酸で、口の中の主導権を握ってくる。淡い色調から想像する水っぽさは感じない。むしろ酸の強さが骨格になって、甲州らしい緊張感を作っている。

裏ラベルには、オリとともに熟成の記載がある。いわゆるシュールリーだ。ここがこのワインの触感を決めている。舌先にピリッと残る刺激があって、ただ酸っぱいだけで終わらない。酸のシャープさと、オリ由来のわずかな厚みが同居しているから、食事にも合わせやすい。塩気のある前菜、柑橘を使った魚、揚げ物のレモン添え、和食なら酢の物や白身の焼き物まで守備範囲が広い。

ここで1つ引っかかるのが、産地の表記がないことだ。甲州は産地で酸の立ち方や果実の出方が変わりやすいのに、その前提が落ちている。だからこのボトルは、産地を語って説得するタイプではなく、造りの情報だけで味を説明するしかない。ステンレスタンク熟成、シュールリー、そして今回の温度条件。この3点が、酸の強さとピリッとした触感の根拠になっている。

次は樽発酵の甲州に移る。樽香が出るかどうかよりも、酸の見え方、果実の輪郭の太さ、余韻の伸び方がどう変わるかに注目して飲むつもりだ。樽を使うなら、甲州の酸を丸めるのか、香りに層を足すのか、口当たりに粘性を出すのか。意図がどこに出るかで評価が変わる。

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井原大賀
1984年 高知生まれ ワイン系YouTuber。日本初のPodcastワイン番組をプロデュース。令和以降アマゾンで日本一読まれているワイン電子書籍の著者。年間40万ml以上ワインを飲む本物のワインガチ勢が語る再現性の高いワインライフ。お仕事のお依頼、コラボ、PR案件お待ちしております! info@grapejapan.com