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ワイングラス考察 ver3.0

木村硝子ミツコを愛でる

ポッドキャスト番組「ワインの授業」ファーストシーズンで語った「ワイングラス考察」の原案台本に本編でアドリブ的に話した内容を加筆し、アップデートしました。端的に言うと、グラスメーカーやセールスに踊らされてはいけない。という内容です。主観的な内容なので、こんな考え方もあるんだ程度にお楽しみください。

本内容は拙著「ワイン考察vol1」にあるワイングラス考察を22年後期バージョンとして加筆しました。前バージョンをお読みの方は下の追記だけ読めばOKです。

グラスでワインの味は変わる?

ワイングラスでワインの味が変わるなんてメーカーや雑誌のコピーよく見かけますが、液体が物理的に変化するわけではないので、厳密に言えば味は変わりません。しかし物理的変化がないからと言って、ストローやペットボトルで飲むと香りを楽しめないし、うがいコップや紙コップで飲むと、心理的に不味く感じる事は否定しません。端的に言えば雰囲気が変わるってやつですね

他のアルコール飲料と比べると比較的高価なワインですが、一説では価格の半分にあたる部分は香りにあるとまでされているので「いかに香りを楽しめるグラスで飲むか」がワインを美味しく飲む上で鍵となってきます。

単純にグラスの体積(容量)が大きくて、口が広がっていたら香り取りやすいのですが、引き締まった味が持ち味のワインだと、酸が崩れてしまう場合があります。

ということは、ワイングラスメーカーが提唱している「品種ごとでグラスを使い分けしましょう」って言い分はあながち間違いではないでしょう。

実際にワイン愛好家たちのSNSアカウントをみていても、大半の方はタイプによって使い分けされているので、一般認知としても「ワイングラスは飲むワインで使い分け」がセオリーになっています。

しかし、ここで冷静に立ち止まって考えてほしいのですが、「本気で使い分けするなら何種類のグラスが必要なのか」という点。ざっくり分けても「爽やか白、濃厚白、軽い赤、重い赤」の4種類。こだわりだせば、「シャンパーニュ、ローヌ、ボルドー、ブルゴーニュ」なんて生産地での使い分けやさらに言えば、「熟成ワイン用、高級ワイン用、来客用」なんて揃えていきたくなるでしょう。

人間の欲望とは際限がないもので、揃えだすとどんどん他のグラスが欲しくなってくるんですよ。


単純計算で1脚3千円のグラスを5種類常備すると考えて15000円。それぞれ2脚ペアで揃えるとなると3万円。数や値段はさておき、あなたは自分の持ち合わせてるワイングラスをどれぐらいの頻度で使っていますか?という視点で私のグラス遍歴を紹介していきます。

庶民のワイン研究所グラス歴史

ワインを何となく飲んでいた頃は、引き出物の類いでバカラやティファニーのワイングラスを使い始めるのですが、心理的にはブランド知名力に安心してた部分がありました。そんな中、ワインにハマりだすと徐々に「リーデル」という存在に興味が出てくるわけです。

「ワインはリーデルで飲む事からスタート」

今思えばある種の洗脳に近い形で始まったのかもしれません。

「千円のワインが2千円ワインのように味わいが増す」なんて業界権威者から言われると無視できませんからね。

結局メルカリで品種別セットなんかを購入し、得意げに使い始めていくのですが、ちょっとした不注意があると割れてしまうんですよ。

品種別セットは各1脚ずつしか入っていないので、同じランクのグラスをもう一度購入するとなると必然的に2脚セット。上のランクだと1脚から購入できるのですが、そのタイプを上のレベルにすると他のタイプも上位レンジで合わせたくなる沼。結局自分では欲望をコントロールできないので、購入する心理的バリアを突破できないとストレスが溜まっていきます。

そこで、出会ったのがステム無しタイプの「リーデルオーシリーズ」。ステムとは、グラスの脚となる部分で、ボウル部分とプレートをつなぐ箇所。 その細さ故に、割れる箇所の大半はステム部分だったので、「ステム無しで揃えれば割れなくて最強、扱いやすいし、安価だしメリットしかない!」と息巻いてリーデルオーコレクターとして布教活動が始まります。

そんな折、ふとダイソー(百均)で買い物してた時に気になったのが薄グラスシリーズ。形状的にはリーデルオーと遜色なく、薄さだけでいうと「リーデルオーシリーズを凌駕する」クオリティなんですよね。価格差10倍以上なので、そこからはリーデルオーに違和感が芽生え始めます。

単純に百均グラスを肯定すれば心理的にも楽だったのですが、「そもそもステム無しグラス全般を否定する思考」へと陥ったので、粋がって揃えたリーデルオーシリーズが普通の水飲みグラスにしか思えなくなってきました。雰囲気のなさとか色素が付着しやすいとか自分の中で使わない言い訳を掘り起こす作業の始まり。そんな思考状態でワインを美味しく頂けるわけもなくステムグラスへの愛が再浮上。

ブロガー視点でよくよく考えてみると、「リーデルってアフィリエイト記事書きやすいなぁ〜」なんて僻み根性から始まり、結局はザイオンス効果(単純接触効果)で洗脳されてたという結論に至ります。ブログや広告書いてる人も本心で商品に惚れ込んで書いてる場合もあるので、否定はしません。しかし突き詰めると世の商品やサービスは全て同じ原理で動かされてると考えると、「自分のニーズとしっかり向き合って商品を選びたい」と挑みます。

しかし、何事も真剣に向き合うことには時間と体力を要してしまうので、こだわること自体を放棄してしまったんですよ。一周回って「液体が物理的に変わらないんだったら何使っても同じじゃないのか」って。そこで次に使い出したのがテイスティンググラス。

ワインセミナーやワインテイスティングの試験でも利用されているわけですし、ましてや世界的なコンクールでも大活躍。しかし、国際規格のグラスはグラスの口が狭く、極端な表現をすれば試験管で飲んでいる気分(作業的にワインを飲んでいる、義務的にワインを飲んでいる)になるので、界隈で評判の高い「シェフ&ソムリエ」ってメーカーのテイスティンググラスを使い始めます。

結果的に品種別で使い分けるプレッシャーからの解放と、安価なので割ることに対してノンストレスいられたので、快適に1年ほど使い続けておりました。振り返ると周りで猫が走り回ってようが、子どもが暴れていようがお構いなしで、酔っていても雑に洗えるわけです。そんな使い方してたら必然的に破損頻度は月一脚以上に。

そんな中、新たな気づきが芽生えます。

到達点

正月にワイングラスを持ち合わせてない家に持ち運び用のトラベラーグラス(木村硝子)を持ち込んで使ったんですよ。ボランジェって高級シャンパンのクオリティも相まってか、そのグラスの万能さに気づきます。そもそも何故そのグラスを持っていたかというと、野外でワイン飲むのが好きで、持ち運び用のグラス探しておりました。ロブマイヤーのトラベラーグラスが、神の雫で紹介されていた事で憧れてましたが、4万円を超える高級グラス。自分には無縁と思ってた矢先、有識者の方からのご紹介で木村硝子のトラベラーグラスに出会ったのです。購入直後はトイレットペーパーの芯に似た安っぽい紙質のケースに、軽くて重厚感のないグラスに1万円は高いと激怒放置。そうは感じつつも、持ち運びに便利なことは変わりないので、使ってみて初めてその良さを理解した次第です。

「軽くて重厚感のない」って第一印象は実は「繊細でエレガント」という表現に変化。香りも取りやすく、スパークリングから濃厚赤ワインまで対応できる。なんと言っても口当たりが極薄なので、味わいがダイレクトに伝わるんですよ。

一度その素晴らしさを体現するともうテイスティンググラスには戻れなくなります。分厚くて重い。マシンメイド特有のステムの綱目に違和感とイライラが募るなど、欠点探しが止まらない。
逆に木村硝子のトラベラーグラスはポジティブ面を掘り起こす作業が始まります。元々は持ち運びのケースに価値を見出していたので、中身は何でもいいマインドだったのですが、調べれば調べるほどいいグラスであることが判明します。実はこのグラスをプロデュースしたのは、無印の創業メンバーで有名な麹谷さんのこだわりで造られたデザイナーグラスで、製品化までの物語がしっかり付加価値として設計されていました。激怒で高いって感じてか価格に納得するどころか、使えば使うほど惚れ込んでしまいます。フォルムの美しさ、ただグラスを眺めているだけで気持ちが癒やされる感覚は「とても安グラスでは得られない至福のひととき」

そうなると欲しくなるのが予備のグラス。1脚だと精神衛生上心細かったので、全く同じグラスをもう一脚買う予定だったのですが、トラベラーケースは1つで良かったので中身のグラスを探す旅に出ます。そこで出会ったのが木村硝子のサヴァシリーズ15オンス。
質感は麹谷グラスと同じで、やや丸み曲線の美しいボディ。極細ステムながらに低重心の安定したシルエット。そして、心強いのが「ビールから白赤ワインなんでもピッタリ」と心強いキャッチフレーズ。
ここで品種別のグラスをイメージして欲しいのですが、ピノ・ノワールのグラスでカベルネソーヴィニヨン飲むのに違和感芽生えませんか?
シャンパンなんて口広グラスで飲んだほうが美味しく頂ける場合でも、反射的に盾細のシャンパングラス使いたくなるみたいな。
実際はグラスの名前通りに使うのがセオリーでなかったとしても、違うタイプを使うには心理的な抵抗が働いてしまいます。そういった面で木村硝子のサヴァ15オンスは「メーカーが何でも使える」って宣言してくれてる分、安心感があるんですよね。
そして、問題のお値段なんですが、私が購入とした時は6千円以下で購入できていたんですよ(現在は値上がり)。

ここで、ワイングラスのコストパフォマンスについて深堀りしていきます。

1回あたりの利用コスト?

皆さんは外食でワイン飲まれる時グラスって意識されますか?

私はとても意識します。それはグラスの質感抜きに衛生的問題。食器皿とスポンジが兼用だったり、拭き上げタオルを頻繁に交換していないとグラスに匂いが移ってしまうんですよね。特に庶民が利用しやすいカジュアル店や、ワンオペレーションで運営されているバーが忙しい時間帯など、に遭遇します。そうなるとせっかくのワインが台無しになりますよね。薄暗い雰囲気の良い店で水垢がべっとりついたグラスに当たった時なんてもう悲惨。

そこで考えたのが、「いくらか別途料金払うことで、グラスのレベルを変えれるなら何円出せるか?」という自問自答。色々な条件はさておき、たどり着いたのが1杯辺り200円ぐらいなら上乗せして特別なグラスを使いたいと。

そして、その心理を家飲みに当てはめてみます。

私の場合だと1日に6杯飲むので、月当たりの利用回数は約180回。

5千円のグラスを2脚使いまわしで1ヶ月割らずに使えば1回あたりの利用コストは約55円。半年割らずに使えば1回あたり10円切るコストパフォマンス。

品種別で使い分けするグラスを何種類も買い揃えると、そのグラスを割るまでにどれぐらい頻度で使いますか?って話。樽熟成タイプのシャルドネグラスなんてピンポイントでしか使えないので、仮に3千円で購入していても月に一度しか使わないなら勿体買い物としか思えません。

安グラスを雑に扱って頻繁に割るなんてもってのほか。

外飲みでプラス費用を払えるマインドなら、家飲みグラスにお金掛けるのは抵抗なく、ある程度の予算は確保できます。しかし、品種やタイプ別で使い分けする労力や管理コストを考えると「高級万能型グラスに一点集中」したほうが所有欲も満たせてコスパも高いという結論に至りました。


自分が本当に気に入った高級グラスを使うと、安ワインを飲む時でも一口の集中度合いが段違い。マインドフルネステイスティングとでもいいましょうか、ワインの味わいが3倍増しぐらいに感じます。
テレビやゲームしながら飲んでも味なんてわかるわけないですし、食事の場合にしても「何を食べてるか(飲んでるか)」を意識することで本質がわかるんですよね。

例えば昨今回転寿司でも高クオリティ謳われてますが、なまじ安価な分、バクバク食べてしまうわけです。食べ終わった後振り返って何食べたか覚えてない状態になってしまったり。逆に同じ品質の寿司を回らない寿司で食べると、一貫ずつ写真撮って噛み締めて楽しむのではないでしょうか。つまるところ支払ったコストに対して受給できる容量が決まるってやつです。

ワインは飲んだら無くなりますが、グラスは割らない限りずっと使える一生モノ。

グラス集めが趣味のコレクターや、可処分所得が多い層は最強グラスを品種別で買い揃えればいいんですけど、一般庶民だと難しいですからね。

特に地震や自然災害のリスク考えても私は万能グラスの1タイプ集中投資でワインライフを満喫したい。


中途半端な価格のグラスを買い揃える金額で、高価なお気に入りグラスで飲んでみたくなりませんか。好みや価値観のウエイトが大部分なので、参考になったかどうかわかりませんが。

追記 22年8月

その後、21年末。木村硝子のトラベラーモデルとサヴァ15オンスがお亡くなりになり、22年前期はモトックスさんが販売している「ジャンシス・ロビンソン」を投入します。

ネームバリューと造りの良さを考慮するとコスパの良い商品で気に入っておりましたが、木村硝子の低重心に慣れていると、ステムの長さに扱いなれして無くて購入後1ヶ月たらずで1脚破損。

そうなってくると気になるのがステムなしバージョン。

どうせ買うことになるならとすぐさま導入しましたが、ステムなしバージョンの最大のデメリットは「スパークリングを飲むときに美味しく感じない」という致命的な欠点があります。

箱ワインを煽り飲みするときには完璧な用途で使えるのですが、ステムなしでシャンパンとかちょっと良いワインを飲むにはやはり心もとない。

そうなってくると「万能型のメリット」を感じれなくなってきました。

結局安いシャンパングラスを倉庫から出して泡専用として登板させておりましたが、これまたステムの長さに耐えれず破損。

上記で考察していた「グラスが安いと無意識に雑にあつかう」ってやつです。

そうなると現状の戦力は、

  • 値上がりして絶対に割ることの許されない「木村硝子サヴァ15オンス」1脚
  • 安ワインから高級ワイン、泡までカバーできるが繊細で割れやすい「ジャンシス・ロビンソンステムあり」一脚
  • がぶ飲み、オンラインのみ、思考停止飲み用の「ジャンシス・ロビンソンステム無し」1脚(梅雨時期に1脚割ってた)

の3脚。そうなると必然的にジャンシス・ロビンソンの登板機会が増えるのですが、安泡を飲むときに締まりのなさを感じだします。

万能グラスといえど、「シャンパングラスっぽい万能グラス、白ワイン用っぽい万能グラス、赤ワイン用っぽい万能グラス」が存在しており、ジャンシス・ロビンソンは「赤ワイン用より」のグラスなのです。

当研究所を読まれている方ならお気づきでしょうが、赤の瓶ワインは月に3〜5本程度の消費量。しかも3千円を超える高級な赤ワインとなると月に1本飲むか飲まないかなので、ジャンシス・ロビンソンは最適解ではなくなるわけです。

本来なら木村硝子トラベラーや木村硝子15オンスを再購入するのが筋なのですが、一度お亡くなりになったグラスを再雇用するのには抵抗があり、ましてや購入時から20%ほどの値上がりしているとなると購買欲は下がります。

しかし、Instagramの広告で流れてくる木村硝子さんを見かけるとついパトロールしてしまい、自分が理想としていた完璧なフォルムのガラスに出会うことになります。それが今回購入した

ミツコ14オンス

どうです? このシャンパングラスっぽい形状にブルゴーニュグラスの要素を足して割ったような完璧なお姿。

サヴァ15オンスと比べても高級感があるので価格差分以上にお買い得感があります。

それでも、庶民が手を出すようなグラスではありません。超お高いです。スーパー高級グラスです。

しかし、これまでのワイングラス考察を思い出してください。

安いグラス=雑に扱う、気持ちが入らない。安ワインを安グラスで飲んでも美味しく感じない。

高いグラス=1回あたりの使用満足度を比べるとむしろ割安。千円ワインは2千円ワインに変わる。10回使えば1万円分働いた思考。しかも一脚集中で使用頻度を高めることでエネルギー分散もなし。愛して使うことで割るリスクも軽減。

さぁ、ともにミツコを愛でようではないですか!

私は複数購入したので湘南グラスさんから買いました!

ABOUT ME
井原大賀
1984年 高知生まれ Grape Japan 合同会社 CEO 国際大学IPU国際総合学部国際環境学科を卒業後、廃棄物の再資源化を目指す企業へ入社。10年ほど業界に 関わる仕事をする傍ら、リユース事業へ着目し独立。シリアルアントレプレナーへのあこがれで事業を仕組み化し売却。 誰も思いつかなかった仕事を生み出すことをモットーに、現在はワイン消費家として事業を展開。ソムリエやワインエキスパート合格をサポートするワイン塾の経営や、ワイン好きな地方従事者向けのウェブコミュニティを運営。 自身がプロデュースするポッドキャスト番組「ワインの授業」はカテゴリーランキング最高2位を記録。万人受け頑固拒否の尖った内容で、業界に風穴を開ける。 自身が陥ったアルコール依存や精神疾患の体験を基に、巧みなSNS戦略で「教育」「社会福祉」「起業支援」を軸に活動中。
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